徒然MEMO

もともとは読書日記。今はよしなしごとをメモする場として。

中曽根康弘氏「予算が2億3500万円なのは濃縮ウランが235だから」に、議員たちは爆笑

『ほんとうは、どうなの? 原子力発電のウソ・マコト』(上坂冬子著/2005年/PHP研究所)という本がある。
六ヶ所村核燃料サイクル施設建設に反対する匿名の告発書「19兆円の請求書」をきっかけに、核燃料サイクルの存在が問題視された時期に、原子力発電の推進派である作家上坂冬子氏が、政治家、専門家らと対談したものをまとめたもの。
その中に、中曽根康弘元首相と上坂氏の対談が収められている。
(初出『Voice』2004年9月号)


中曽根 いまから半世紀前の1954年、日本における原子力予算を最初に通したのは私と当時の改進党の同志たちです。……石油、石炭、水力などに頼っている時代から、原子力に頼る体制にもっていったほうがいいと考えたのです。そして、2年後の1956年に第一回の長期計画が策定されました。……いっそう効率的なものにするためには、一度燃やした燃料をリサイクルして何度も活用していく方法が望ましいと考えました。(略)

中曽根 われわれはそういう基本方針で長期計画をつくった。そしてこれまで日本の原子力政策は、その線に基づいて動いてきた。しかし、リサイクルして取り出されたプルトニウムを使う予定だった高速増殖炉もんじゅ」は、事故を起こした(1995年)のを契機に、以来、ずっとストップしている。

上坂 お言葉ですが、あれは事故ではなくトラブルという事故以前のもので、すでに安全審査もすませているんですけれど。

中曽根 もし「もんじゅ」が順調に稼働していれば、「待った」をかけるような動きは起こらなかったと思う。(略)

上坂 なるほど。「もんじゅ」が止まっているのが、国策に「待った」をかける議論の一因になっているとは、気がつきませんでした。(略)「もんじゅ」は国の安全審査も県の安全性確認も終えているのに、なぜか、知事のゴーサインがまだ出ない(2004年11月時点)。

中曽根 原子力関係でちょっとしたトラブルが起こると、非常に大げさに取り上げられて、致命的な事故のように報道されたり扱われたりしてきました。しかし、いままで日本では、科学的、技術的に厳重な点検をしながら、発電所を動かしてきたわけで、実際に、原子力発電のメカニズムとして人命に関わるような大事故を起こしたことはありません。

上坂もんじゅ」のナトリウム漏れは、大事故のように仕立て上げられましたけど(笑)。
____________________________

中曽根 経費の問題を考えると、リサイクルして再利用するより埋めたほうが安上がりだ、という意見が最近になって強く出てきたことは確かでしょう。(略)

中曽根 国家的なエネルギー戦略の観点ではなく、高いか安いかを考えるなら、埋めたほうが安上がりなのはいうまでもありません。しかし、(略)長い目で見て核燃料サイクルを推進するのが、日本のプラスになることは間違いありません。(略)

上坂 そもそも「待った」がかかったのは『19兆円の請求書』という「怪文書」が出たのがきっかけですね。(略)そもそも「怪文書」は監督官庁経済産業省から出たと噂されています。(略)もっぱらの噂によると課長補佐が書いたとか。噂が本当だとすれば、たるんでいますね。(略)

上坂 リサイクルの流れが止まれば、原子力発電そのものがお手上げになるかも知れない。原子力発電所を抱える地元が全国的に混乱状態になれば、現状の電力の3分の1がガタンと減って停電は必至で、取り返しのつかないことになってしまいます。

中曽根 原子力発電はなんとなく怖いものだ、お化けのような怪物だ、というような誤った観念を一般の国民に与えることは、きわめて非科学的なことなんです。これを覆すために、日本人が将来を見つめて冷静に、科学的にものごとを考える方向に議論を進めていかなければならない。とくに若い人たちのあいだに、そのような誤った俗説に惑わされない知識を与える必要があります。

上坂 その点でスゴいなと思ったのは、東大総長だった有馬朗人先生のなさっていることです。若い人もさることながら、子供たちに正しい原子力の知識を教えなければならない、と茨城県東海村の近くにある大洗町で、小中学生を集めてエネルギーの講義を続けていらっしゃるんですって。(略)
____________________________

中曽根 非科学的な感覚に基づく世論ができていることも大問題です。それに、そんな世論を気にする政治的なアクションも社会を惑わせますね。ともあれ原子力委員会は、核燃料サイクルに対して英断を下すべきです。
____________________________

上坂 「怪文書」は新しい反原発運動と見てもよろしいのでしょうか。

中曽根 断定はできないけれども、そういうところに非常に接近している考え方のように思いますね。

上坂 「怪文書」は合理主義を装った、反体制運動、昔風にいうと“アカ”の人たちの思想運動に通じるものと考えると、話はわかりやすいですね。
____________________________

中曽根 私が原子力に関心を持ったのは1953年のハーバード大学のゼミへ出て、その帰りにニューヨークで日本の財界人グループと会ったときです。(略)

中曽根 帰国後、私は改進党の予算委員として、この機会に突如予算を通そうと考えた。役所に相談するとばれるし、ジャーナリズムや学者は猛反発する。だから私は、衆議院の法制局の者を呼んで極秘裏に相談し、2億3500万円の原子力の調査費をつくった。(略)予算を通す最終段階で、突如として修正案を提出したのです。
 ところが、衆議院を通ったあとで俄然反対が沸き起こって、マスコミから「中曽根は原爆を作るつもりか」などとずいぶん叩かれたんですよ。

中曽根 日本学術会議の幹部の学者たちが私のところへ「あの予算は撤回してくれ」と三度も陳情に来ましたよ。これに対して稲葉修さん(元法務大臣)が、学術会議の幹部の前で「君らが居眠りをしているから、この札束でほっぺたをひっぱたいてやるんだ」といったのをいまでも思い出します(笑)
 参議院予算委員会では、(略)なぜ、予算は2億3500万円なのかという質問があった。半端な数字に思えたんでしょう。私が「濃縮ウランは、ウラニウム235だから」と答えたら、皆さん爆笑したものです。そんなこんなで通させたのです。


こちらも
・「中曽根康弘 もんじゅ 鹿島」で検索
・「鹿島の施工実績」
・毎日新聞記事「国策民営」の転載(CIA協力者正力氏や中曽根氏について)